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 そして、例の軽自動車がどこにあるのか分からないというので、紛失届を出してもらった。  盗まれた可能性だってなくはない。  俺達は早速、刑事課へ伝達すると、刑事課の署員らは急ぎ足でやって来た。 「で、お姉さんの方は、帰られてしまったんですか?」  湯浅警部は眉を顰めた。彼としては、引き留めてほしかったに違いない。 「すみません……。何だか急いでおられたようですから」 「ふむ……。そうですか」  上條美佳の生い立ちを話した。両親は幼い頃、離婚。父親に二人の娘は育てられた。母親は離婚後、新潟の実家に帰ったという。 「ほう。と、すると母親は二人の娘を捨てたってわけですね」  湯浅警部の声には、同情するような声がこもっていた。  俺も流石にこの生い立ちは、気の毒だと感じた。 「えぇ。だからああいう性格になったんでしょうか」  母親の愛情を感じずに、育ったという訳か。
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