4/6
前へ
/145ページ
次へ
 上條美佳は結婚する気がない男に、もしかしたら結婚を迫られたかもしれない。飽く迄、推測だ。  遊びの付き合いだったのだろう。  上條美佳が結婚したかった相手は多分、日高。しかしその思いはおそらく叶わなかった。日高は自由を愛する人。結婚しないで籍を入れず、女性と同棲し、他の女性も欲しいタイプだったのだろう。  そんな相手との玉の輿を夢見た女は、沢山いた筈だ。 「女って、したたかな生き物ですね」  俺のつぶやきに、池村巡査長は「まぁな」と、口角を上げて、少し長めに瞳を閉じた。  池村巡査長が学生時代につき合ってた女性も、そんなタイプだったらしい。埼玉県警の女性警察官になったが、多分今頃は結婚退職しているだろうとの事。 「ったく、しょうがねぇなぁ。さて、警らでも行くか」 「はい……」  俺は池村巡査長と共に、マークエックスに乗車した。  夜の街を警らする。一日が終わったばかりの夜の街は、どこか浮かれていたり、明日の事を思うと重いため息を落としながら歩いている人、様々だ。  皆、どんな思いをして歩いているのだろう。
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!

716人が本棚に入れています
本棚に追加