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琥珀色のほうじ茶も熱くておいしい。
お母さんは、今頃、病院だ。
先月の健康診断で、小さな腫瘍が見つかった。
悪性じゃないけど、取ってしまいましょう、といわれて、明日手術することになった。
「あ、電話」
どきっとして立ち上がる。おばあちゃんとふたり、廊下の電話に飛んでいく。
「はい、藤野です。ああ、雅樹さん。いえいえ、二人ともいい子にしてますよ」
やっぱりお父さんだ。
「瀬奈ちゃん」
おばあちゃんが、にこっとしながら受話器をくれた。お父さんの、瀬奈か、という明るい声が響く。悪い知らせではないとわかってほっとする。
「お母さん、病院食で足りなくて、こっそりプリン食べたって」
振り返り、おばあちゃんに報告する。
「ふふふ、本当? 食いしん坊は遺伝だわね」
おばあちゃんは、まんざらでもなさそうだ。
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