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肩を揺すると、ふがっ、といういびきと共に目を開けた。
「起こしてごめん。ねえ、あっちに何かいるみたいなの。ちょっと手伝って」
おばあちゃんを起こさないように、声をひそめる。
「ええ~さむいし。やだよ」
芳樹はこぐまのように布団にもぐりこみ、にべもない。
「お願い。何かいるんだってば」
しぶしぶ起き出す。必死に手招きをして、花瓶台の前へと呼ぶ。
芳樹は、眉をしかめて、
「この下?」
と不機嫌そうに手を差し入れた。
「うん、なにか、ない?」
芳樹は、顔は背けて手をしばらく動かしていたが、
「ん」
と、何かに手を掛け、そっと引き抜いた。
床の上、掌に載るほどの……
「こたつだ」
四角い厚紙の切れ端に、落ち葉が何枚も重ねて張り付けられている。
「こんな小さいこたつ……誰が使うの」
「まさか、小人?」
私と芳樹は顔を見合わせた。そんなわけない。でも、まさか。
「こびとさーん!……うっげほっ」
「わっ大丈夫」
ほこりを吸ってむせる芳樹の背中をさすっていると、
「おはよう。早いねえ」
とおばあちゃんの声がし、二人で飛び上がった。
芳樹に目配せをし、後ろに回した手で、元の場所に戻せ、と合図する。
うん、と頷いて、芳樹は、極小こたつを素早く花瓶台の下へ隠した。
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