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「でも、やっぱり、麻酔とか怖いよ」
お母さんは、子供の前でも、強がらない。
「先生のいうとおりにしてれば大丈夫だよ」
「お姉ちゃんがお母さんみたいだ」
芳樹が、すかさず突っ込む。
手術、頑張ってね、と私たちはお母さんの丸まった背中を代わる代わる撫でて、病室をあとにした。
「あ、お母さんに、今朝のネズミのこたつ、聞けばよかったね」
帰りのバスの中で、よっくんが言った。
それもそうだ。おばあちゃんの家は、お母さんが学生時代まで住んでいた家でもある。
「ネズミか、小人か、わからないけどね」
◇
おばあちゃんは、私たちを出迎えると、買い物に出掛けた。
玄関の扉が閉まるや、花瓶台の下に張り付く。
「何か、お菓子、置いてみる?」
私の提案に、よっくんが真剣な顔で、こくり、と頷いた。
おばあちゃん、失礼します、と言いながら、台所を漁る。
小人が(もしくはネズミが)好きそうな、小さなお菓子。
「おねえちゃん、これは?」
芳樹が、ロッテのチョコパイ、を見つける。
「大きくて、隙間に入らないよ」
指で厚みを測る。
「そうかなあ?」
芳樹は、諦めきれない、という顔で、箱を元に戻す。この甘さ爆発のお菓子は、芳樹の大好物なのだ。
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