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「美鈴、ほらやるよ」
毎年の習慣のように、そのカイちゃんが紙袋を渡してくる。
手作りのものや高級菓子店のものまでどっさりと入ってる。
この中にバレンタインの売り場陳列が、ギュッと押し込まれてるみたいだ。
「ニキビができちゃうんだよねぇ」
「じゃあ、いらないんだな?」
「いる。いる。いります!」
大好物を前にして、断ればカイちゃんが捨ててしまうとわかっているから、なおのこと断れない。
だってチョコレートには罪は無い。
「お前もチョコやる相手くらい作れよ」
「うるさいなぁ」
小さい頃は女の子みたいな顔して、背も低くって。
他の男の子にヒーローの敵役を押しつけられては泣いてたのに。
それが中学を過ぎると、背がにょっきりと伸びちゃって。
女の子みたいな顔が女の子達の間でヒットしちゃうと、背だけじゃなくて鼻までにょっきりと伸びたらしい。
常に斜め上から発言してくるんだもん。
物理的な話じゃなくってね。
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