初恋泥棒

24/84
前へ
/84ページ
次へ
振り返らなくても分かる。 だってわたしのこと「サク」って呼ぶのは一人しかいないもん。 「何してんの、こんなとこで」 こんなとこでって、自分のクラス戻る途中なんだけど。 そっちこそ、用がないなら無駄に話しかけないでくれる? なんて、妄想の中では思いっきり悪態吐いて走り去ることが出来るのに。 現実のわたしは、ただヒロの方から声をかけられただけで嬉しくなってる。 振り返ると、そこにいたのはやっぱりヒロ。 相変わらずかっこ良くて。 立ってるだけで見入ってしまう。 いつもは隣に女の子がいるけど、今日は一人なのかな。 「なに見てんの?」 「や、今日は一人なのかなって」 「俺だって友達と学食行くし。財布忘れたから取りに戻ってきただけ」 と、少し拗ねたような表情で応えるヒロ。 「あ、そっか。そうだね。乾くん達と学食に行ってるってクラスの人が言ってた」 「え、サク俺のクラス来たの?」 「え?......あ」 しまったー!わたしのお喋り! なに言わなくても良いことまでベラベラ喋っちゃってんの?! 「ってかその弁当......」 「あ、これは違うの。これは、」 「お前知らないうちにそんな大食いになったんだな。太るぞ?」 「違うから!」 「ははっ、嘘だよ」
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加