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振り返らなくても分かる。
だってわたしのこと「サク」って呼ぶのは一人しかいないもん。
「何してんの、こんなとこで」
こんなとこでって、自分のクラス戻る途中なんだけど。
そっちこそ、用がないなら無駄に話しかけないでくれる?
なんて、妄想の中では思いっきり悪態吐いて走り去ることが出来るのに。
現実のわたしは、ただヒロの方から声をかけられただけで嬉しくなってる。
振り返ると、そこにいたのはやっぱりヒロ。
相変わらずかっこ良くて。
立ってるだけで見入ってしまう。
いつもは隣に女の子がいるけど、今日は一人なのかな。
「なに見てんの?」
「や、今日は一人なのかなって」
「俺だって友達と学食行くし。財布忘れたから取りに戻ってきただけ」
と、少し拗ねたような表情で応えるヒロ。
「あ、そっか。そうだね。乾くん達と学食に行ってるってクラスの人が言ってた」
「え、サク俺のクラス来たの?」
「え?......あ」
しまったー!わたしのお喋り!
なに言わなくても良いことまでベラベラ喋っちゃってんの?!
「ってかその弁当......」
「あ、これは違うの。これは、」
「お前知らないうちにそんな大食いになったんだな。太るぞ?」
「違うから!」
「ははっ、嘘だよ」
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