プロローグ。

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プロローグ。

今年の春に大学を卒業して大手の生命保険会社 フェニックスに就職が決まった。 私は、長谷部まどか。 初めての出勤。不安や緊張をしながらも 胸踊らす新入社員は、たくさん居るだろう。 しかし私は、絶体絶命のピンチにいる。 新人なんだから遅刻なんてとんでもない。 そんなことは、分かっている。 分かっているのに……。 「嘘でしょーう!?」 何でこういう日に限って電車が人身事故で遅れるのよ? 最悪…もう間に合わない。 しかも、それだけではない。夜は、金縛りに遭い。 うなされて、なかなか寝つけなかった。 それだけでも、遅刻をしてしまったのに…。 私は、中学生の頃から毎晩 金縛りや重い身体に悩まされていた。 震えて動かない身体に誰かに見られている感覚。 怖い……目を開けてそこに誰が居るのかを 確かめるのが。 ホラーや怪談話とか大嫌いな私に取ったら 毎晩が恐怖だった。 今日もそのせいで遅刻に…さらに身体が重い。 「うぅ…もう間に合わない」 しかも慌てて来たから連絡するにも スマホを忘れる始末。 無事に会社に着いた時には、すでに1時間後だった。 もう…ダメだわ。 初出勤にして印象が最悪な状態になってしまった。 こんなの絶対に上司とかカンカンだよ! 下手したら先輩方々に睨まれてしまう。 この体質が無ければ……遅刻もせずに 早く寝られたのに。 くっ……身体がズッシリと重い。 それでも何とか部署まで行けた。 私の部署は、ファミリー向けを担当している。 怖い……でも入らなければ。 ハァッ…と深呼吸してからドアを開けた。 「も、申し訳ありませんでした!! 新入社員の長谷部です。 電車の事故で遅刻をしてしまいました」 入るなり思いっ切り頭を下げて謝罪した。 うぅっ…穴があったら入りたい。 頭を上げるのが怖い。絶対に怒鳴られる!! しかし、その時だった。 「随分と引き連れてるな? まるで観光ツアーの団体みたいだぞ」
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