《靖治》

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 羨ましい。  彼女のようなコスプレイヤーといい、堂々と人前に出て、関係を築ける人間全てが、妬ましい。  考えれば考えるほど、劣等感しか浮かばない俺は、自宅以外に居場所など無い。  そうして俺は勝ち組に敵意を向け、世のしがらみをがむしゃらに耐える。そうして、忍耐力だけは、勝ち組よりも上であると、自分を鼓舞しなければ、生きる意欲すら失いそうで、やり切れないのだ。  勝ち組たるお前たちは恵まれ、ある程度の恐怖と苦難を、助け合って乗り越えて、評価の点数は加算され、見返りを得ているのだから良いではないか。  幼少の頃から不自由なく育ち、向上心に目覚め、懼れに敗れる事無く着実に前進し、目標へ到達出来るというのは、お前たちにとっては自分達が通ってきた道であり、過去であり、成せば成ることであり、当然のことであるかもしれないが、そうしたくても、現実に蓋をされ、その蓋が重みを増して降りてきて、圧迫され、這い上がることすら出来ない人間もいるのだ。  どんなに考えて動いても、結果的に減点されてばかりの人間は、確かに居るのだ。  好きで恐いのではない。  好きで神経質になったのではない。  俺の過去が、お前たちとは違うからだ。  世界が俺を退廃の沼に突き落としたのだ。  両親は居るようで、居ない。  俺は一人だった。これからも。  努力だけではどうしようもなく、恐いから一人になったのだ。  救いは無い。報いも無い。  今日明日じゃ、何も変わらない。  何も、起こりはしない。  彼女の周りは彼女の味方だらけで、俺はまともに見ることすら難しい。  片や、生ける屍。  片や、賛美されし天使。  年は確か、二十五の俺より、彼女の方がいくつか下のはずだが、こうも人生の充実感に開きが生じるとは。  ただ、妬ましい。  ただ、ひたすらに、悔しい。  今まで、文句一つ漏らさず耐え、怯えを呑み込みながら生きてきた俺は、あとどれだけ頑張ればいいのか。
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