1/8
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ

 

何とはなしに目が覚めた。なんだか夢を見ていたような気もするが覚えてはいない。折角だ。時間はたっぷりある。もう一眠りしたいと思ったが、どうやら意識は徐々に覚醒していく。 今は何時頃だろう。私はゆっくり首だけを動かし窓に目をやった。そこには当然、いつも見慣れた木枠のすりガラスの模様が見える筈だ。しかし今日は違った。何やらガラスに白い模様が増えているではないか。私の頭はその事実に大層驚き、そして眼を見開き模様をじっと見つめる。 しかし種明かしは簡単だ。何のことはない。それは窓ガラスに張り付いた霜の結晶が日差しを通して浮き上がって見えるだけであった。 しかし「霜」という言葉に私の体は反応したらしい。種明かしと同時に頬に触れる空気が急に冷たく刺さる感覚を覚える。そして小さく息をのんで吐き出せば真っ白い息は原始的だが実にわかりやすい簡易温度計として私の前に今の温度を知らしめる。 結果、私の体が寒いと認識して騒ぎ出す。「小便がしたい」と。 毎日毎日襲ってくる尿意。特に寝起きの尿意は物心ついた頃より慣れることなく今に至る。特に私は寝小便小僧の頃から寝起きが悪く、目が覚めてさっと起き上がる行為が非常に苦手なのだ。 そして今日もまた恒例の我慢大会が幕を開けた。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!