大嫌いなバレンタイン

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 別にチョコレートやココアが苦手な体質だからではない。いや、そういう体質ではあるけれど、食べようと思えば食べられる。なんなら毎年貰う、しかも年々量の増えていくチョコレートやマフィンやクッキーを、妹達にも分け与えずに自分で消化している。そしてすべて食べ切った翌日は大概、腹痛に苛まれて布団から出る事もままならなくなってしまうが、それは有名税だと思っておくことにしている。  そんなつもりは全くなかったが、自分の母校には珍しく部活を掛け持ちしていたところから話が広がり、小中学校では学年を問わずそこそこの有名人だった。さらに高校では所属している部活に同級生が一人もおらず、その存続を首の皮一枚で繋げていると教師の間でも噂になってしまい、目を掛けられすぎて生徒からは少し浮いてしまっている。自分から望んだ事ではないが、だから校内ではやはり有名なのだ。相手の名前は知らなくても、相手が私の名前を知っている事がざらにある。しかもわけのわからないまま、上級生に目を付けられたり下級生から尊敬されていたりするので、やりにくい事この上ないが。こんな通学中でさえ、校外の目つきの悪い先輩に見つめられているのを感じるけれど、もっと他に凝視した方が良いものがあると思って流している。教科書とか、参考書とかね。  まぁ、自分が奇人変人の類であり、部活動だって存続させる為ではなく、自分が続けたいからやっているだけの事だというのは私が一番よく知っているので、実際には他人の目はあまり気にならないけれど。その結果、謎の施しなのか憧れなのか、毎年カバンの中のお菓子の量は小学生の頃から増え続けている事は良しとすべきなのか。それはつまり、返すべき量も増えるという事なのだから。
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