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気がつけば、駅に着いていて、慧人さんと二人になってしまった。
……いや、なってしまったって、嫌なわけじゃないんだけど。
ヴヴ。
ポケットの中で携帯が震え、見てみると、楓さんと悠平さんから、何かあったら連絡するようにとメールが来ていた。
優しいなぁ。
ありがとうございます、とだけ返信しておく。
「俊くん」
「はい」
「英語、ちゃんとやってる?」
「へ?」
あまりに突飛だったから、変に高い声を出してしまった。
それに対して大笑いした後、慧人さんは「ごめんごめん、いきなりだったよね」と言った。
「ほら、10月だから、ちょうど2か月前くらい? 兄さん家で電話したでしょ」
「あ、ああ……」
そっか。慧人さんって、英語の先生なんだっけ……。
「やってますよ。単語も、なんとか、堪えて……」
「偉い偉い。……物理は?」
「え……、物理?」
「うん。兄さんの、物理」
「やっ……て、ますよ」
「そう。偉いね」
慧人さんは僕のことをじっと見ていた。
それはもう、不気味なほどに。
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