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「ねえねえ知ってる? 柊ひなさんを介護していたアンドロイドの響の話」
「知ってる知ってる! 絶対動けるような状態じゃないのに、何故だか動いてきちんと柊さんの介護をしていたってやつでしょう? 一月前だっけ……なんだか残念よね」
長い時を大切に大切にされ、たくさんの愛情を注がれた道具は、付喪神になることがあるそうな――。
蝶が舞うように桜が踊る夜空のもと。
動きを止めたアンドロイドと、その胸の中で安らかな眠りについたひな。
『ひなさま、僕……』
『ひび、き……? 嘘、ああ、響……っ!』
付喪神となり魂を得ていた響は、出会った頃の姿のひなと手を繋ぎ、桜の花びらでできたそれはそれは美しい天へと続く道を昇っていった。
その首にはもう、バーコードはない。だって彼はもうアンドロイドでは、モノではなくなっていたのだから。
『ひなさま、愛しています』
『……っ、ひび、き……、んっ』
この手は永遠に離さない。約束も、当然、永遠に……。
だからそれは、生まれ変わったとしても変わらないものだ。
「ねえひなさま、誰が後世に、僕たちの話を残したんでしょうか、ね。それも、ラブストーリーにして……」
彼らの薬指にはキラリと輝く結婚指輪。
そして、ひなのお腹には響との間にできた子供が元気に、力強く宿っていた。
【終わり】
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