182人が本棚に入れています
本棚に追加
さらりと流れるストレートロングの、純日本人らしい艶のある黒髪。
水分が多く含まれているのか輝いて見える大きな黒い瞳と、整ったかわいらしい唇。
「本当に宜しいのでしょうか? 新型もおりますし、バグなのかなんなのかわかりませんが、なにも表情を作ることができなくなったこいつでなくとも」
「…………」
ゆるりと首を振った美しい女性に微笑まれ、スクラップ寸前であった旧型介護用アンドロイドの男性機である響は人間のような動きでまばたきを繰り返した。
「では、サインをここに」
流麗な文字を書いたそのひとにお辞儀をされた彼は、白衣をまとった中年の開発者に背中を押され、本日より主人となったその女性の前によろけ出る。
すると手を引かれ、彼はあたたかな腕の中に包まれた。
――コノヒトハ、ドウシテ役立タズノ僕ナンカヲ。
こうして、旧型介護用ロボットとして作られたプロトタイプの『Android type―01:響』と、天涯孤独のお金持ちである柊ひなの物語が始まった。
最初のコメントを投稿しよう!