愛してください

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 旧型介護用アンドロイドのプロトタイプである響には、三つの機能が備わっている。  一つ目は介護支援で、入浴や移乗などのお手伝いをするものであり、二つ目は自立支援で、歩行・リハビリ・食事など、介護される側の自立支援を促す機能。そして三つめは癒しや見守りなどをしてくれるコミュニケーション・セキュリティの機能である。  新型はこの三つ目の機能である人工知能(AI)を進化させたものが搭載されたため、お金持ちたちがこぞって旧型から新型に乗り換えていき、開発者の娘に与えられていたこのプロトタイプの響も例外ではなく捨てられてしまったというわけだ。 「…………ひび、き。響」  紅茶色のさらさらとした人口の髪の毛と、宝石のように輝く翡翠の瞳。  開発者の娘の好みで造形された優れた容姿である響は、おずおずと話しかけてきたひなに首を傾げた。 「あなたはどうして、表情をなくしてしまったの?」  唐突な質問に響は人間のように目を(みは)り、よくわからないと首を横に振る。  その動きは滑らかで、アンドロイドとは思えないほどのものだ。 「そうよね、そんなこと言われても困るわよね。ええと……あのね、響」  そう気まずそうに視線を逸らされた響は、彼女の現状を教えられた。  一月前に家族を失い、天涯孤独になってしまったこと。  彼女はいいところのお嬢さんであり、両親が遺した莫大な遺産があるため働かなくても生きていけるということ。  そして、ひとと会話をすることができなくなってしまった、ということである。 「響は介護用なのよね?」 「はい、そうです」 「……ごめんね、響。私、あなたに介護してもらうようなことは一つもないの。でも、私にはあなたが必要で、だから、そばに居てくれる……?」  自分の存在価値は介護するということであるはずなのに、介護が必要ではないというひなの言葉が理解できず、響は困惑してしまう。  だが、彼に組み込まれているなんらかのプログラムが作動し、響はこくりと頷いていた。 「ありがとう、響。とても嬉しいわ」  ――コノ人間(ヒト)ハ温カイ。ダケド……。
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