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ふふっと悪戯な笑みを浮かべるひな。
そんな彼女がなにを言ってくるのか、正直響には予想がつかない。
においを感じる知覚がある響はひなの髪の毛からシャンプーの甘い香りを感じ取り、長い睫毛を伏せた。
「何があっても、私から離れないで。これは、“命令”よ。絶対的な命令。だから今後私がもしあなたをいらないと言ったとしても、あなたはこの命令を守り続けてちょうだい」
ふっと、腕の力が抜ける。
するとひなとの間に少し距離ができ、響はその揺るぎないまっすぐな瞳に射貫かれた。
「命、令」
「ええ、そうよ。これは命令」
「……承知致しました」
プログラムにこれは絶対的なものであるとセーブし、響はうるさく鳴る胸の音と、どうしてか彼女を見ているとそわそわしてしまう感覚にうろたえる。
だから、なのだろうか。嬉しそうに笑うひなを離すことができなくて、二人はしばらくこのままの格好で居続けた。
◆◇◆◇
それから、数か月。
屋敷に訪ねてきた人物を見るや否や、ひなが嬉しそうに笑いその人物へと駆け寄っていった。
――胸ガ、チクチク。コノ痛ミハ、ナンダロウ。
ヘーゼルナッツのやわらかな髪色の、カッコイイ男性。
優しい印象というよりはスポーツができそうな感じの爽やかなひとで、身長も高く、響は自分の顔に触れた。
――僕ト違ッテ、男ラシイ顔立チノヒトダナ。
ひなさまは、ああいった男性が好みなのだろうか。
よしよしと頭を撫でられているひながとても幸せそうで、響はぐっと拳を握り締めた。
「ひな、旧型の介護用アンドロイドを買ったのか……?」
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