第四章 夫婦の真相

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美緒さんとは妙に話が合ってしまい、今度ウチに遊びに来てね、なんて約束をしてその日は別れた。 そして勇二さんと帰宅して、久しぶりに二人で一緒に夜を過ごす。 朝までは、今日という日をこんなに穏やかに終わる事になるなんて、想像もしていなかった。 「ねえ…なんでソウタくんがあんなにイケメンだって、話してくんなかったの?」 昨日のうちに作ったカレーを温めている時、後ろから抱きしめながら勇二さんが聞いてきた。 焦げないように、お鍋をかき混ぜる続ける私。 おたまを持つ手まで、ゆるくだけど拘束されてほんの少しだけ動きづらい。 でもそれが幸せで、振りほどく気にはならないのだけれど。 「え、蒼太くん?」 「うん。隠されてた、って思ったから…俺、疑っちゃった…」 ごめんね、と囁くように言われてキュンとする。 こんなに素直に言われたら、つられて素直になっちゃうよね。 「あのね…私…」 「うん…」 「蒼太くんがイケメンだって、言われるまで気付かなかったの」 「……は?」 私の肩に額を乗せていた勇二さんが頭を上げる。 振り返り、間近にあるその顔が驚いてるのを見て、私はクスクスと笑った。 「全然、イケメンだって思わなかった。勇二さんから見てもイケメンだった?」 「え、そりゃあ、そうでしょ?」 「ふうん、そっかー。蒼太くん、すごいねぇ」 意味が分かっていない勇二さんが可愛い。 カレーが温まったのを確認してから火を止めて。 私は正面から、勇二さんに抱きついた。 「だって、ここに最高のイケメンがいるもん。他のイケメンなんか興味ない」 「…俺、イケメン?」 「うん、イケメン」 「……やったぜ!」 しばらくの間、寂しかったから。 それを埋めるように、力を込めて抱きしめあう。 その暖かさと、ほんの少しの息苦しさが、心地良かった。
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