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第一章 妻の決意
始まりは、小さな小さな違和感だった。
ある日の午後。
夫を仕事に送り出し、ちょっとした家事を終え、のんびりとテレビを見ていたいつもの平日。
お菓子を取ろうと伸ばした手に、かさりと何かが触れたのが最初。
「…?」
それは薄い茶封筒だった。
中には少し厚めの何かが入っている。
あぁ、写真だ。
つい先日、夫が行ってきた社員旅行。
その集合写真を渡されたっけ。
夫はいつも面倒くさそうに参加しているし、職場で特別仲が良い友人がいるという話も聞かない。
だから私も興味が持てなくて、そのまま放置していたけれど。
せっかくだから、見てみようかな。
なんとなくその気になって、折られている封筒の口を開いた。
行ったのは近場の温泉付きスキー場だって言ってたっけ。
古くて安くて、大きいホテル。
安さにつられた若者が多くて落ち着かないし、スキーにはあんまり興味がないし、温泉もたいしたことないし。
それだったら家で寝ていた方がマシだったとかなんとか…。
結構ボロクソに言ってたよね。
帰ってきた時の夫の様子を思い出して、小さく笑う。
その顔が、
写真を見た瞬間に、
凍りついたのが自分で分かった。
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