第一章 妻の決意

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封筒に入っていたのは、ただの集合写真だった。 若い人から中年くらいまで、それなりの人数が笑顔でこちらを向いている。 夫は右隅の後ろ側から、周囲と同じようにこちらを向いて笑っていた。 その笑顔を見て、懐かしい、と思った。 恋人として付き合っていた頃、 結婚が決まった頃、 新婚ホヤホヤだった頃。 よく見ていた笑顔。 私が大好きだった笑顔。 そういえば…最近、見てなくない…? 写真を見るまで気付かなかった。 いつから、夫はこの顔をしなくなったのだろう? っていうか、それもそうだけど、いや、それよりも… なんで『社員旅行』で、この顔をしてるの…? あんなに面倒くさがっていたのに。 一緒いたいと思う仲間なんかいない、楽しみだと感じる要素がない。 そう言っていたのに。 もう一度、手の中の写真に視線を落とす。 そこには楽しそうに笑う夫。 その隣には…若くて可愛い女の子がいた。
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