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俺も女々しいというか、影響されやすいというか…。
そんな思いを胸に秘め、仕事を終えた俺はある店の前に立っていた。
目の前には『珈琲 灯』の看板。
そう、俺は結局、アヤのバイト先に様子を見に来てしまっていた。
アヤの雰囲気の変化に気付いてから数日。
あれ以来、俺の目にはアヤがすごく生き生きとしているように見えて。
それが俺じゃない誰かの為かもしれないと思うと、いてもたってもいられなかった。
とはいえ今日は早番、仕事帰りともなれば世間は間もなく夕飯時だ。
アヤの勤務時刻は過ぎているから、ここで会う事はないだろう。
でも、それでいい。
俺はただ、日頃アヤがどんな人達と働いているのか、それを見たいだけだから。
『勝つためには、敵をまず知らないと!』
また、岡本さんの言葉がよぎって苦笑する。
最近よく話すようになった岡本さんに、影響され過ぎかもしれない。
そうは思ったけど、それでも放っておくことなんか出来なくて。
俺は改めて、お店のドアを睨みつけた。
入るのはちょっと緊張するけども、普通に見れば俺はただの客でしかない。
だから大丈夫だ、気にする必要なんかない!
ぐっと力を入れて、レトロな雰囲気のドアを押す。
カランコロン、と心地良いドアベルの音が鳴り響いた。
「いらっしゃいませ。一名様ですか?」
振り向いた店員に、俺はハッと息をのむ。
彼はおそらくソウタくんだろう。
確かにドラマの山崎君に雰囲気が似ている。
だけど問題はそこじゃなかった。
何だ、このイケメンは!?
ドラマの山崎?確かにあいつもイケメンだ。
けど、コイツはそんなもんじゃない。
芸能人顔負けのイケメン…だと……?
アヤは、どうしてその事を言わなかったのだろうか?
話のネタとして、一番に出てきても良さそうなものなのに。
まさか、隠したかったのか?
だとしたら、それは何のために…?
「あの、お客様…?」
イケメンが俺を覗き込む。
だけど俺は動けずに、半ば呆然としてまま彼の顔を眺めていた。
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