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そして、出張直前に。
衝撃的な事が起こった。
帰宅して、玄関のドアを開ける。
いつも通りにリビングに向かうと、中からアヤの声が聞こえてきた。
相手の声は聞こえないから、おそらく電話をしているんだろう。
俺の帰りに合わせて夕飯の支度をする事が多いアヤとしては、珍しい事だ。
そこで、俺の中の疑惑が膨らんだ。
いつもはしない電話、アヤの最近の変化。
一体、誰と話してるんだろう…?
ほんの少し罪悪感があったけど、これもアヤを信じるためだと自分に言い聞かせて。
俺は、そっと聞き耳を立てた。
「…うん、私も会いたいな」
耳に届いたのは、いつもより高くて甘いアヤの声。
その声と内容に、思わず声が出そうになった。
「…そんな風に言われたら、嬉しくなっちゃうなぁ。また今度、行くからね」
何を言われたのか、アヤはとても楽しげで。
それが無性に腹立たしかった。
怒鳴って、乱入して、電話を奪ってしまえば良かったのかもしれない。
でもそんな事をする自分は想像しただけでも惨めで、必死に衝動を抑え込んだ。
『また今度、行くからね』だって?
仕事で、店で会うだけじゃなく、外でも会っているんだろうか?
頭に浮かぶのは、電話の向こうでスマホを持つイケメンの姿。
その影を無理やり追い出しはしたけれど、すぐに冷静さを取り戻すことは出来そうになかった。
俺が出張でいない間、
アヤは、
喜んでソイツに会いに行くんだろうか?
そう、考えてしまったから…。
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