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それから数時間後、俺は慣れた店舗の休憩室でのんびり缶コーヒーを飲んでいた。
出張先の店を出ていつもの店に直行した俺は、店長に挨拶をして土産を渡した。
既に事情を聞いていた店長は、苦笑いで俺をねぎらってくれて。
そのまま仕事に入っても良かったのだけれど、今日は人手が足りているとのことだった。
「面倒をかけたし、半休にするから帰って良いよ」
そう言ってもらい、とりあえず一息ついていた。
…というよりも。
このまま帰る事が、少し躊躇われた。
アヤは今日もバイトのはずだ。
だから家に帰っても、きっと今は誰もいない。
だけど家にアヤがいなかった時、俺は疑わずにはいられないと思う。
本当にバイトなのか?…と。
俺のシフトはコピーして、カレンダーのすぐ脇に置いてある。
だけど日数の少ないアヤのシフトは、直接カレンダーに書き込んであった。
つまり、俺は原本を見ていない。
簡単に嘘がつけるのだ。
ほう、と大きなため息を吐く。
どうにも最近の俺は、女々しくていけない。
気になるなら本人に聞けばいいと思うのに、なかなか行動に起こすことが出来なくて。
疑いたくない、アヤに対して申し訳ないと思う気持ちと、脳裏に焼き付いたイケメンへの怒りとの間で、俺の心は揺れていた。
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