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「彩夏さんって、その、何て言うか、凄いですよね」
「え?何が?」
「なんか…心が広いって言うか、器が大きい、って言うか…ウチは絶対に無理ですもん」
一体何の話かと思ったら、美緒さんは彼氏にすぐ怒ってしまうらしい。
自分と一緒にいるのにスマホを見たり、髪型やメイクの変化に気付いてもらえなかったり、記念日を忘れられたりしただけで。
勇二さんから話を聞いて、私がそれらを全て許すと聞いて不思議に思っていたらしい。
っていうか、勇二さん。
そんな風に、私の事を職場で話してくれてるんだ。
なんだか嬉しくて、くすぐったい。
勇二さんを見たら、照れたようにふいと視線を逸らされた。
「なんで、怒らないでいられるんですか?」
美緒さんにそう聞かれて、考えてみる。
多分、許しているのではなくて、そもそも気にしていない…いや、気にならないんだと思う。
でも、前からそうだったのかと聞かれたら、答えは否で。
以前は…例えば智則と付き合っていた頃は、私も美緒さんと同じように彼氏に腹を立てていた。
だから私が寛容な訳じゃない。
もし、そう見えるのだとしたら、それはきっと…。
「勇二さんから、いつもそれ以上のものを貰ってるからかなぁ」
自然と出てきた答えを聞いた美緒さんに、また「凄い」と褒められて。
それが、なんだかとても嬉しかった。
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