第二章 宇宙の招待

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「え、なんで?」  そういえば、瑛太と進路について具体的な話をするの初めてかもしれない。  高校受験のときも、瑛太の志望校はなかなか教えてもらえなかった。  学区トップ校を受ける予定だったけれど、瑛太が家から近い高校を志望したらしいというのは後から聞いた話だ。 「うちの高校だと成績上位って、だいたいそのへん狙うから」 「ああ……まだ、決めてないけど。薫は?」  どこか歯切れの悪い相槌を打つと、逆に尋ねた。 「家から通えるとこかなあ。みんな家出ちゃったし、お父さんがお前には一人暮らし無理だろうって。まぁ宇宙兄がこっち来ちゃったし、二人大学行かせるの、学費だけでも大変なのわかるし。まぁ、東京の大学ならだいたい通えると思うけど……国立はやっぱりどこも大変だよね」  七森町は東京のベットタウンでもあり、立地が良いので、都内まで一時間あれば行けるのだ。宇宙も特殊な学部を志望しなければ、都内の大学に通ったはずだった。  薫の志望校はまだ漠然とはしているものの、偏差値と希望条件を照らし合わせると選べるほどにはないのだった。 「……ふうん、そっか」  瑛太はさほど興味なさそうに、また本に目を落とす。
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