第三章 天照とその娘

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「最初に二ノ宮神社に行ったときは、雨じゃなかったけど、曇りだったよね。次に稲荷に行った日は雨だった。で、八坂神社も伏見稲荷も晴れてて、だけど稲荷山は山の中で日光が届かなかった! この間、学校で出てきたのも――あの日、雨だったからだよ! なんでこんな単純なこと気が付かなかったんだろ……!」  これを確認できるのは、カミサマと一緒にいた薫だけだ。  瑛太はしばし目を見開いて、矢継ぎ早に言う薫を見つめていたが、やがて薫の興奮が移ったかのように頬を上気させた。 「もしそうなら……俺、肝心な神様のこと忘れてたかも」 「肝心な神様?」  瑛太は身を翻す。薫の手を逆に掴み返して、引っ張るように祖母の家へと向かう。  正面には少しだけ欠けた、十四夜の月が光っていた。 「やっぱり難しく考えすぎてたんだ。なんで須佐之男のこと考えたときに、そっちに頭が回らなかったんだろ。……月讀命(つくよみのみこと)。天照大神のもう一人の弟神だ!」
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