第四章 神の降りる島へ

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「か、帰ったんじゃ……!」  確信はなかったものの、実際に目にすると驚いてしまう。 「何を言う? 名前がわからねば、帰ることなどできないと言っただろうが」 「でも、瑛太が月讀命だったって」  カミサマは肩をすくめる。 「そうか。倒れたから知らぬのか。にしても、あれほど下手な嘘もないと思うが……。あの場所に見覚えはなかった。だからおそらくは違うのだろう。同調と言うか……何か縁を感じないこともなかったが、さほど縁が強いとも感じなかった」 「じゃあ、瑛太はなんでそんな嘘を?」 「やはりおぬしは鈍いな……荒療治がなかなか効かぬくらいだから仕方もないが。……格好をつけようとして、格好がつかぬのは気の毒なことだ」 「荒療治って、何かされたんですか!? 瑛太だけじゃなくって、わたしにも!?」 「どうにも面倒くさく縺れている縁があれば繋たくなるのだ。まぁ、『幼馴染だ』と言っただけだが、少しは効果があったような気がせぬでもない。エイタは自ら動かざるを得なくなったし、そなたは己の中の矛盾に多少は気がついたであろう? 自分がどこに立っておるのかわからぬままでは、どこに進んでよいかもわからぬからな」 「……はあ」  さすがに抽象的すぎてどういう意味かさっぱりだったが、わかるところだけ考えようと試みる。
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