第四章 神の降りる島へ

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(幼馴染……って言ったって……いつ?)  そんな言葉、いつ出てきてもおかしくない――と思いかけた薫だったが、ふと思い出す。  《彼》がそう言ったからこそ、薫は瑛太のことを意識し始めたような気がするのだ。 「え、じゃあ、あれってもしかして瑛太じゃなくって」  となると、色々考え直さなければならないことが出てくる気がする。  だが、カミサマは笑うだけで答えをくれない。そういえばそんな神様だったと思い出す。 「カミサマ、あなたは一体……」  ふと縁をつなぐという言葉が気になった。そんな神様がどこかにいたような気がしたのだ。  考え込む薫の前で、カミサマは自宅の方へ歩き始める。 「さて、そろそろ夕食か。このまま帰ればありつけるな。久しくまともなものを食べていないから、食べてから眠ることにしようか」  すぐにでも瑛太と相談したいと思うけれど、カミサマはしばらく眠るつもりはないようだ。  もどかしい、と思いながらも、薫は心がだんだん踊りだすのがわかって困ってしまう。  カミサマから早く解放してあげたいのは確かなのに、こうして瑛太と一緒に旅を続けられるのがたまらなく嬉しいのだ。  そんな矛盾に戸惑っていると、カミサマが楽しげにつぶやいた。 「それにしても、そなたたちの祈りはおもしろい。互いに逆方向を向いているというのに、願うことは同じだ」  相変わらずカミサマの言うことはよく意味がわからない。  それを仕事をしない――と思っていたけれど、実は、答えは自分で見つけるしかないのだと、言っているのかもしれない。  空を見上げると、月が太陽に続いて西の空に沈んでいく。その追いかけっこはまるで瑛太と自分のようだと、薫は小さく笑った。
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