第一章 高校生の義務

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第一章 高校生の義務

 1  返ってきたテストの答案用紙を見た瑛太(えいた)は、最悪だ、とつぶやいた。  *  二年最初の定期テスト。ゴールデンウィークを満喫した薫と瑛太は、その一週間後には広い試験範囲と格闘していた。  結果は思わしくなかった。順位を十落としてしまった(かおる)が肩を落としながら家に帰っていると、見慣れた猫背が視界に入る。 「あれー瑛太? 今帰り?」  帰宅部の彼が、薫と同じ部活終了時間に帰るのは珍しい。 「……あぁ」  振り返った幼馴染の瑛太はいつもよりも更に猫背に見える。気落ちしているように思えて、薫は尋ねた。 「どうかした?」 「……順位落とした。まじ、ヤバい」  何の話だろうと薫は首を傾げる。 「順位?」 「定期テストのに決まってんだろ」 「えっ……何番?」 「十番落とした」  なーんだ、同じか、と思ったが、直後、青ざめる。  薫の十番と瑛太の十番は重みが違う。彼はいつも飄々と高得点を叩き出し、五番以内に入っているのだから。 「先生にも呼び出されて、原因を訊かれたんだよ。まぁ……心当たりはあるけど、言えねえし」  薫はああ、と納得する。 「神様の名前探しか……」  確かに荒唐無稽過ぎて、口にはできないだろうと思った。
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