14人が本棚に入れています
本棚に追加
「え……。なんで?」
私はおかしくもないのに中途半端な笑みを浮かべて祐也に問う。
「最近会っても喧嘩ばかり。なんか、恋人って言う雰囲気じゃないよな」
「そんな……! でも、仲直りするじゃん! 理解も進むよ?」
「理解……。俺たちは合わないっていう理解か?」
私はバケツで水をかけられたような気がした。祐也と私の決定的な違いが見えた気がした。
「違う、よ……。お互いの性格の理解、だよ……」
もう何を言っても無駄なのはどこかで分かっていたが、口から言葉がこぼれた。
「俺、もう疲れたよ。……別れてくれ」
私はその場にへたり込んだ。作りかけのシチューはどうするのかな、なんてどうでもいいことを考えた。涙が浮かんだけれど、流さないように上を向いた。もう、終わったんだな、と実感はわかないけれどぼんやりと思った。
「私は祐也との時間、楽しかったよ。今までありがとう」
玄関のドアを開く前に私が言うと、祐也は私の方を一度見て、下を向いた。
「……ごめんな」
祐也の蚊の鳴くような声が聞こえた気がした。何にごめんなんだろう。別れることに? 謝るくらいなら別れないで欲しかったよ。
「じゃあ、元気でね」
私は言って、ドアを開けた。
雪が降っていた。
最初のコメントを投稿しよう!