つけるかつけないか

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つけるかつけないか

「なあ、つけて」 寝転がり首だけ出して、こたつに入っている零士が私に言った。 「つけてる」 こたつの上にメイク道具を広げ、私は今まさにツケマツゲをつけようと目を見開いて鏡の中の自分を見ていた。 「ついてねーよ」 幼なじみで隣に住んでいる零士。 リビングのこたつには、今のところ、零士と私だけが入っていた。 「いや、ついてねー、あったかくねーもん」 突然こたつ布団をめくられ、びっくりしてまつげが変な風についてしまった。 「ああ、もうっ。ついてない!」 鏡を見て私は、またやり直しかと思って嘆いた。 「やっぱり、ついてないんだろ?つけろよ」 がばっと起き上がり、零士は私に顔を向けた。 「だから、つけてる最中なのに、零士が邪魔するからつかないんじゃん」 「は?なんの話だよ」 「つけま。もう一度接着剤をつけなきゃだよ」 「お前、ツケマツゲなんかいつからつけてんの?」 少し身を前に乗り出してきた零士。私の顔をまじまじと眺めてくる。 「だいぶ前からだけど」 「なんでつけてんの?」 「そりゃあ、つけた方が可愛くなるじゃん」 零士が前に可愛いと言っていたタレントは、ツケマツゲを上手につけていた。『今も『つけて』って零士が言ったから。つけてんの」     
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