37人が本棚に入れています
本棚に追加
「は?つけて欲しいのは、こたつなんだけど」
「あ、そうなの?」
接着剤をつけまつげにつけ直す前に、私はこたつの電源を確認した。
手元のこたつスイッチは、ちゃんとついている。コンセントが抜けているのだろうか。
「ついてるけど」
顔を上げた私の目の前に零士の顔があった。
「うわっ、なに?」
「つけない方がいい」
「え?今つけろって言ったじゃん。どっちよ」
「両方つけなくていいよ。ほら、もういくぞ。待ちくたびれた」
こたつから出て、零士はおもむろに私の二の腕を掴んで立ち上がらせようとする。
「だって、リップもまだだよ」
「いーよ、どうせキスしたらとれちゃうんだから、つけなくて」
何か急に大胆発言があった。
ふーん、つけなくていいんだ?
ツケマも、こたつも、ついでにリップも。
私と零士は、コートを羽織り玄関で靴を履いた。
「なあ、今日は何食べる?」
幼なじみだった零士とデートするのは、今日が二回目だ。
先に靴を履いた零士が振り返って手を伸ばしてきた。
「ほら、手」
繋いだら零士の手は、こたつよりもあたたかいのかなぁって思いながら手を伸ばした。
おしまい
最初のコメントを投稿しよう!