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が、狂気という完全防音の壁に遮られ、声は届かない。
「止めに行きましょう!」
「う、うん。わかった」
真に促されたサラリーマンは戸惑いながら、外へ出る。
「ま、真くん、これって……」
「……ええ。止まってますね」
バーを出てすぐで、バーテンダーは女性の胸を触っていた。その状態で凍結されていた。
「……」
二人は黙ってバーのなかへ戻る。先程よりも空気が冷たく感じた。
女子高校生が心配して、大丈夫でしたか? と訊いてきた。真は首を振った。
「誰も危険な目にはあってないから大丈夫です。彼が犯そうとしたのと同時に止まってしまいました」
「もう、 私たちだけだ」
サラリーマンは椅子に座って、ため息のように言う。
「ふふっ……げっ」
少年の様子がおかしい。ゲップをする少年の手元には赤ワインのビンがある。
「飲んだの? 大丈夫?」
「うるせぇー! 大丈夫だよ!」
「おい! 待て!」
少年は赤ワインのビンで女子高校生を殴った。女子高校生がその場に倒れ込む。真はカウンターのなかに入って、タオルを探す。そして、女子高校生の血の出た額に当てる。彼女は気を失ってしまったみたいだ。
「ま、まただ」
サラリーマンが震えた声でつぶやいた。
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