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少年は酔ってしまったらしい。けど、その少年ももう動かない。
真ははっとして、声が漏れた。
「これは……」
「私もわかったよ、この現象が」
サラリーマンは少年を見たあとに言った。
近年の人間の行いに神様が憤慨し、戒めているのか。
凍結された人間はみな、悪事を働かせた人間なのだ。
きっと誰もが嘘をついたことがある。
きっと誰もが私欲のために他人を傷つけたことがある。
ただ数人だけが善行に生きていたのだ。それが三善真だったり、奥手なサラリーマンだったり、ヒキコモリで人との関わりがなかった少年だったり、ひたすらに純粋で真面目な女子高校生だったり、ワインのことしか頭になかったバーテンダーだったり。
彼らだけが、残った世界。けれども、そんな彼らも世界が変われば狂い始める。いや、もともと人間というのは善だけでは生きていけないのかもしれない。
「私はこの世界で生きていける自信がない……。悪い……すまない」
「え……な、なにをしてるんですか!?」
サラリーマンはキッチンから取ってきたナイフを真に向けた。
「も、もうこの世界には、生きる意味なんて、ないんだよ。誰もいない世界に生きていけない……。だから、終わりにしよう。みんなで、死んでしまおう……!」
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