真冬はバトルだ!

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冬になるといつも思い出す、そしてこたつを見るとそっとはぐって思い出すことがある。懐かしい、蜜(みつ)の冬の思い出。 「うう、寒い寒い!!」子供たちは学校から帰るやいなや、かじかむ手足を温めるため、こたつに滑り込む。それはどの冬も家庭も同じ、けれどうちは違う。冬のこたつはバトルなのだ。その日は弟の友(とも)が被害者だった。 がるるるる!ガブッ!「いてええ!!」足を引っ込めてさする弟を後から歩いてきた姉の蜜(みつ)が「あーコタツの中見て入らんけえよ、チコが釣れたんやろ?」と笑いながらこたつを覗き見る。中では眉間にしわをよせた小さな白チャの犬がいてまだ睨みをきかせ唸っていた。名をチコという。 チコは今年で12になる犬だ小型犬のチワワという犬種で姉の蜜が小学生の低学年の時に父に頼み込んでもらってきた愛犬なんであるがこの子は女の子の割に負けん気が強く、姉弟を下に見ていた。父が主人だと思っているから下のものには容赦ない。だが犬らしく主人である父には良く懐いていて、オフの日はトイレまで付いてくる、その様子が最近生意気盛りの子供より父にとっては可愛いらしい。 飼った当人の蜜ですら「ご飯と散歩の人」くらいにしか思ってないんじゃないかと思うくらい蜜もこたつに足を入れるとガブッとやられている。 それを親は笑ってみていて、「チコが釣れた」という。子供たちは痛くてハラハラしてとても笑い事じゃないのだが。 あれから、もう何年も経ってもう蜜も大人になり、可愛がっていた父が亡くなり一番可愛がっていたチコを一年で連れて逝った後も、こたつを覗いて見ると思うのだ。またチコが釣れるんじゃないかと。 今日もまた、こたつを覗いて、あの子の場所を残しておく。それが我が家の冬。
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