1986・12

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 天井から差し込む光が空気中の粒子を浮かび上がらせる。  家に帰ってドラクエがやりたい。  5月に父さんに買ってもらった。  テロリストが銃の引き金を引いた。  景気のいいマズルフラッシュとともにコンクリートの壁に弾痕が刻まれる。  ボッ!ボッ!ボッ!  まるで『コマンドー』の中にいるみたいだ。ケイちゃんと『トップガン』見に行くまでは死ぬわけにはいかない!  足首や腕の関節が悲鳴を上げてる。  死にそうだ!  颯爽と現れたケイちゃんがテロリストの銃を懐に引き入れた。 「ヨシコ!大丈夫か!?」  ケイちゃんは1年先輩の泉中の生徒だ。帰宅部でこれといった活躍はしていない。近所に住む幼馴染だ。  姿勢を崩したテロリストの頭にケイちゃんが強烈な肘をかました!  間髪入れずに足払いをかけ、テロリストのバランスを完全に奪うと銃を奪った。 「死にてぇのか!?てめぇ」  銃口をテロリストの頭に突きつけた。 「アッ、アイスワーラー……」  テロリストがワケの分かんないことを言った。 「水だと!?人殺しが何言ってんだよ!?」 「ケイちゃん?英語喋れたっけ?」 「イヤ、アイスワーラーってのは沖縄で水って意味なんだ」  敵地からは脱したが車に轢かれてケイちゃんは死んだ。
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