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笠地蔵
泉駅で列車を待っていた。息をハァと吹きかけ窓ガラスにハートマークを描いた。
親分には悪いことをした調味料職人として育ててもらったのに弓を引くような真似をして。編笠なんておかしなファッションも地蔵にかぶせれば、まぁオシャレ!笠の中には矢を仕込めるようなカラクリになっている。
この中に隠しておけばバレることはない。雪はまだまだ降っている。
「おい!いつになったら動くんだよ!?」
でっぷりと太った杖をついた男が車掌室のドアをドンドン叩く。
「申し訳ございません!まだ目途が立たないんです」
「何だと!?急いでるんだ!早くしてくれんか?」
列車が動かない!コレはまずい!
親分の死体は冷凍庫に隠してきたが、誰かに気づかれるかも知れない。
「そんなこと言われましても」
「おい!青年!雪合戦でもしないかね?」
何を唐突に!?この吹雪の中でか?
「寒いですから」
「何を弱りきっているんだ?貴様、義景のところにいたイシカワだろ?」
コイツ!タイムスリップしてきたのか?
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