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彼は同級生と雑談をしながら、卒業祝いの食事の約束をする。その中にはとある件……男同士だとごく自然なようにそのことで、彼や他の同級生を揶揄う生徒が何人かいた。
しかし、こんな状況は別に慣れっこだ。彼も中学生時代には彼らにお返しをしたことがあるからだ。
だが、今回は揶揄い返す……そんな余裕はなく、とてもじゃないがその気になれない。非常に難易度が高く、達成が出来るか不確定なものだったからだ。
周りを見渡すと、その件をクリアした人物が何人かいるようだ。心底、羨ましいと彼は思った。
彼にはもう1つの複雑な心境がある。霧がかけられたような、モヤモヤとしたこの気分を晴らしたいと。
それは第二ボタンを大好きなあの人に渡し、告白を成功させたい……この気持ちだけだった。
願わくば、好きな人が他の男子と被らないようにと心の奥で思った。
彼の好きな相手は明るく、天真爛漫な性格で誰にでも優しく、艷やかで綺麗な髪をしている可憐な女性だ。
いざ、自分の番となると重りが伸し掛かるのように身体が言う事を聞かない。
予め、台詞を用意している。この日の為に1ヶ月も前から準備をし、しっかり暗記してきた。彼は独り言のようにブツブツとそれを唱える。
だが、彼女に話しかけたいがそれすらも困難に近い。まるで壁のように切り立った、孤島の絶壁……それを崖の下から見上げているような、そんな心情で彼女を眺めていた。
告白することが、ここまで難しいとは思いもしなかった。
今日で必ず、この片思いに決着を着けなければ。
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