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「えっ……幽霊!? 冬だから……雪男!?」
「誰が幽霊で、雪男だって!?」
今の姿勢がそう見えたらしい。全く、酷い奴だ。
彼女は家で食事をしてこなかったように、勢いよくご飯を口に掻き込む。そしてお箸をお茶碗に乗せ
「ごちそうさまでした。美味しかった。あ、直樹おはよう」
「おはようって……なんでいるのさ? お前もサッカー部のマネージャーなんだから、早く行かないと遅刻するだろ?」
「一緒に行こうと思って、六時頃、部屋に起こしに行ったのにずっと寝てるんだもん」
もしかして熟睡していたあの時、
外に出たのは綾だったのか……ちょっと悪いことしたなと自分を責める。
俺は歯磨きを終えて、ニ階にある部屋に戻り、制服に着替える。再び一階に戻り、台所には朝食が用意してあった。
「いただきます」
「食事をしながら聞いてくれる?」
と綾が言う。
「昨日、材料がちょっぴり足りなくて、必要なものを購入しに、買い出しに出掛けたの。もちろん安全面は考慮してね。
街に行く為にどうしても通らないといけない、あそこの坂道、知ってるでしょ?
私は、坂を自転車で気持ちよく下りていって、途中まではいつも通りなんだけど、問題はその後。
確か、時計を見たら夜の18時は過ぎていて、辺りはもう真っ暗。もう少しで下り終わると思っていたその時、パンッて音がして、
自転車のタイヤを確認してみたら……画鋲が刺さっていて、坂を降りてからじゃ自転車屋も遠いし、
溜息をしながら、歩いてそのまま家に帰ったんだ」
「要するに、買い物に出掛けて自転車がパンクしたから俺の家に来たって事か。お前の不注意だろ……それなら、歩いて行くか、リオに乗せてもらえばいいじゃないか」
「暗くて見えなかったんだもん……
そうしようと思ったけど、いつも自転車だし、それにリオったら先に学校に行っちゃってて」
「ったくしょうがない、早く学校に行くぞ!母さん、ごちそうさま」
食事を終えて、俺達は一緒に家を出た。
自転車を倉庫から出して、鍵を開け、俺と綾は二人乗りで出発した。
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