本命の義理とちょこっと失踪事件

バレンタインデー当日。

「やっぱり、今日は数で勝負しないとかあ……」

「数より気持ちだろ？愛を込めて送ってくれているのか、そこを重視する。もしくは相手次第で気持ちを変えるようにしてる」

「そうか？　前者はよくわからないな。彼女達は、お前に愛情があるから渡した。相手次第は納得できる。興味がない人に貰っても、面倒なだけだ。俺は貰えそうだが」

「おいおい……くれるなら一人ずつがよかった。
あんなに群がっていたら、本命も義理もないと思うんだよ。
それにな？俺としては好きな人からなら、例え義理チョコでも、俺自身の本命チョコに成り得る。かなり嬉しいからな。
相手が本命のつもりでも、好きな人からじゃなきゃ全部、義理なんだよ」

　そういう考え方もあるか……リオと同じであんなに必死で群がっていて、義理なんてあるだろうかと思った。
　彼女らにとっては本命しかいないんじゃないかと思うが……けど、染谷の考えは嫌いじゃない。

「染谷、お前いいこと言うな。数なんて気にせず、俺もその考えでいこう。元々、バレンタインデーはチョコを送る前には、文房具や書籍とかをプレゼントしてたぐらいだしな」

「へえ、そうなんだね……知らなかったよ……」