雪の一夜

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朝、目が覚めたら白い景色に変わっていた。 身体を突き刺すような寒さに胸が熱くなる。 始発電車に揺られ朝の街を眺める。 薄汚れたいつもの街は白く染まっていた。私はその逆だろうか。 いつもの世界が今日だけは異質に見えた。 昨日までとはまるで違う新しい世界に昨日のセーターを着て、昨日のコートを羽織った私がいつもの改札口を出た。 流れる人混みに流されて、いつも通りの道を行く。 子供達の無邪気な笑い声、不恰好な雪だるま。 どうしても目について、私は白い息を漏らした。 知らない世界に来てしまった。 そのことが嬉しくもあり、怖くもあった。 雪の冷たさが昨日の温もりを際立たせる。あの時はずっとこのまま時間が止まれと願ってしまった。 そして、一人とぼとぼ歩いている今の自分に二度とこんな時が来なければ良いのにと願ってしまっている。 雪の一夜で私は魔法にかかった。 雪の一夜で私は大人になった。 雪の魔法よ、永遠に溶けないで。 そう願い、私は家に帰ってきた。
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