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丸井が襖を開けて部屋の中へ入ると3つの顔が丸井を捉えた。
木製の堀机がいくつも備え付けられた畳の部屋で、かなり広い。
その中央に男が3人、広い部屋だからか弁当の梅干しのような存在感で申し訳程度に座っている。
「ん? 俺が最後だと聞いたが……。皆便所か?」
丸井が当然の疑問を口にした。
この集まりは、丸井達の中学校のクラスの同窓会で、全員が集まれば30人はいるはずだった。
しかし、丸井の目の前には3人しかいない。
どんなに少なくても10人いなければ旅館を貸しきっている関係上、中止になってもおかしくはない。
それに答えたのは、いかにも不健康そうな顔色で、頬は痩せ目に隈のある男だった。
「いや、これだけらしい」
普段あまり声を出さないのだろう。
音量が丸井に比べて小さく、独り言のようにも聞こえた。
丸井はかろうじて聞こえた声の信憑性を確かめる為か、他の二人の顔へ視線を移動させた。
額に痛々しい傷跡を残し、苦労してきたのか髪は白髪混じりの灰色になっている。
この男の真剣な眼差しから頬のこけた男が嘘をついている可能性が低いことを表していた。
もう一人は外国人のようなジェスチャーをして「さっぱりワカリマセーン」などと口にしている。
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