Dear Angel

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Dear Angel

 空から落ちた天使がいました。かすかに透けた青色の美しい翼をもつ、やさしげな少年でした。  少年の背中には、ふたつあるはずの翼がひとつしかありませんでした。それは生まれつきでしたので、少年には全く罪はなかったのですが、不吉だといわれて、地上に落とされてしまったのです。  少年は長いこと地上の町をさまよっていました。人間は少年の姿を見ることができません。ですから、少年はいつもさみしく、ひとりぼっちでいました。  誰かが迎えに来ないものかと、少年はいつも空を見上げていました。けれども心の奥底では、誰も迎えには来ないだろうと思うのでした。飛ぶことができないので、自分で帰ることができないのです。なんという孤独だろう、少年は悲しみに目を伏せました。  あるとき、少年は人間たちが行き交う町の中にいました。寒空の日のことです。太陽は灰色の雲に姿を隠し、しんしんと冷える空気が町を浸していました。気がつけば、はらはらと雪が舞いはじめています。  ひとりの女性がすれ違いざま、はっとして足を止めました。とても美しい女性です。実際にはどこにでもいるような素朴な女性でしたが、天使には人間の心が美しさにつながって見えるのでした。
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