私の意地悪な旦那様

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 ヴィルジニアはこの冬結婚したばかりだ。五年近く片想いをしていた夫とは、兄が通っていた寄宿学校で出会った。物語に出てくる王子様のような、癖のない蜂蜜色の髪と澄んだ海のような碧い瞳の美男子に、ヴィルジニアは一目で恋に落ちたのだ。  女性から声を掛けるだなんてはしたないことだと理解しながら、ヴィルジニアは二桁にも及ぶかというほどアプローチを続けた。けれど全く相手にされなかったから。だから、彼のほうから結婚しようと言われたときは、本当に天にも昇る心地だった。  ――それなのに。  新婚初夜こそ優しく抱いてくれたものの、二度、三度と回を重ねるごとに、夫婦の営みは味気のないものになってしまっていた。  情熱のかけらも感じられない、義務を果たすためだけの淡々とした行為。それでもヴィルジニアは、夫に突かれるだけで感じまくって、はしたなく乱れてしまう。  長い片想いの末の結婚だ。ヴィルジニアのほうが想いが深いのは仕方がないことなのかもしれない。けれど、ヴィルジニアにはひとつだけ気に掛かっていることがあった。  ふたりの結婚を決定付けた運命のあの日、夫が口にした言葉のことだ。
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