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時計の針が時を刻む澄んだ音が室内に響く。
ヴィルジニアは満ち足りた表情で夫の胸に寄り添っていた。
全幅の信頼を寄せてウルバーノに身を委ねるヴィルジニアの赤い髪を、ウルバーノの長い指が愛おしむように撫でる。か細い肩を抱き寄せて、彼はぽつりと呟いた。
「……ときどきで良いから、昨夜みたいにしてもいいかな」
「ええ……ときどきでしたら……」
ヴィルジニアは躊躇いなくうなずいた。
昨夜の豹変ぶりには驚いたけれど、ヴィルジニアのウルバーノへの想いは変わっていない。これからだってそうだろう。
ウルバーノがヴィルジニアを必要としてくれる限り、きっと、この愛は終わらない。
そう思った矢先。
「やった! じゃあさ、医学部に通ってる弟から興味深い道具を借りられそうなんだ。今度、試してみない?」
「え……?」
満面の笑みとともに、ウルバーノが悦びに弾んだ声をあげる。
晴々としたその笑顔を目の当たりにして、ヴィルジニアは血の気がさっと引いていくのをまざまざと感じたのだった。
――きっと、この愛は終わらない……はず。
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