ほろ苦い

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バレンタインが近づき、バイト先のチョコレート店も、忙しくなる時期だ。 とりわけ、バレンタインの前の日なんて、休憩時間なんてありはしない。 次から次へと大量の箱を持ってくる女の子達。 誰だ? 義理チョコなんて、今は流行らないって言ったのは。 「この前の男の子にあげるの?」 「さあ。」 「さあって何よ。もしかしたら、うまくいくかもしれないじゃない。」 パートのおばさんに励まされながら、押し寄せてくるお客さんの波を乗り越える。 「すみません。どれがお薦めですか?」 お会計の波間に、ふいに現れた一艘の船のような女の子。 目がぱっちりしていて、ちょっと可愛い。 「そうですね……どのようなタイプをお探しですか?」 「両思いになるようなチョコ。」 私は手を止めて、その子を見た。 よく見ると、ニコニコしている。 笑顔も可愛い。 チョコの力を借りなくても、思いは通じるんじゃないか。
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