ほろ苦い

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そこにパートのおばさんが、スッと入ってきた。 「両思いには、これなんかお薦めですよ。」 おばさんが差し出したのは、何でもない6つ入りのアソートチョコ。 「じゃあこれにします。」 女の子は満足そうに、そのチョコを買っていった。 「後でクレームになりませんか?」 私はおばさんに耳打ちした。 「あそこで何も言わない方が、クレームになるよ。それにあの女の子、どんなチョコをあげても、まず振られる事はないでしょ。」 私と同じ事を考えていたおばさんに、ちょっとだけ親近感を覚える。 「それにしてもいいわよね。恋って。」 そう言いながらため息をつくおばさんに、引いてしまう。 「恋……ですか?」 「そうよ。私だって若い時、恋愛を楽しんでいたわよ。」 「へえ。」 「それが今の旦那なんだけどね。」 思い出し笑いをしているおばさんを横目に、聞かなきゃよかったと、また仕事に戻った。
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