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すると、遠くにいる雄太郎が、私と目が合って、小さく手を振ってくれた。
私も、パートのおばさんに見つからないように、小さく手を振る。
それを見ていた隣の女の子が、頭を下げる。
私も釣られて、頭を下げた。
今、ちょっとミルクを発見した気分。
「それか思いきって、その苦さを楽しむか。」
「えっ?」
「それじゃあ、質問の意図とは違うか。」
パートのおばさんは、首を傾げながら、品だしを始めた。
ほろ苦いなら、ほろ苦さを楽しむ。
片想いなら、片想いを楽しむ。
でもそれじゃあ、いつまで経っても片想いから、抜け出せないじゃないか。
はあっとため息をつく。
抜け出したくても、抜け出せない。
奈南さんが雄太郎の側にいる限り、この恋は叶わない。
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