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「おはようございます」 「あ、おはようございます」 条件反射で声を返す先には隣の和菓子屋「みかみ」で働く安条(あんじょう)さんの姿があった。 「なんか最近、ずっと店頭にいません?」 160センチの私が見上げてしまう身長を感じさせない、人懐こい犬のような笑みが私に向けられる。 「いや、今月は仕方ないですよね」 「青柳さん、それ来月になっても言うでしょ」 クリスマスにホワイトデー。 チョコレートを販売する者にとっての繁忙期は隣接している。 「…確かに」 ふっと思わず息が漏れてしまう。 安条さんは今のいいですね、と私の顔を指差す。 「何がですか?」 「疲れている時こそ、笑った方がいいんです」 「たまには和菓子も食べに来て下さい、すぐに作りますから」 ひらひらと手を振ると、その姿は暖簾の奥に消えていく。 「疲れているって、私そんなに顔に出てる…?」 私は安条さんの背中を見送りながら、人指し指で口の端を持ち上げてみた。
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