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無論、今いる道には街灯もある。完全に闇に閉ざされたわけではない。文明の利器は夜を食い潰し、人間の目を慣れさせた。地元ではあんなに怖かった夜道も、こちらに越してからは何も感じなくなった。しかし今、僕は完全に思い出した。ここには「夜」がある。暗闇がある。どれだけ人が街を照らそうと、どれだけ影を小さくしようとそこには確実に「夜」が存在しているのだ。
ほぼ直角の道はこの町の特徴だ。公園の前を通り過ぎ、すぐ曲がる。そうすればもう公園の姿は見えなくなるはずだ。首元がふわふわとおぼつかない。急に荷物が重くなったような気がする。さぁ早く、ここを抜ければもうすぐだ。
公園を曲がる直前、目に入ったものがある。
「社」だ。
公園の中に「社」がある。
小さな社だった。高さは僕の背丈と同じくらいで、肩幅くらいの大きさ。土台部分? に当たるのだろうか。なんだかよく分からない沢山の漢字が掘られ、異様な空気を醸し出している。地元にもこのような社はあったが、こんな住宅の近くに、しかも公園の中では見かけたことはない。
その社は僕の曲がった道を監視するように建っていた。
僕は目を逸らす。
やはり今日は何を見ても気味が悪い。
うなじの辺りがこそばゆい。
今日は早く寝よう、僕は白い息を吐いてまた歩き出す。
帰宅した時、僕の手足はまるで死体のような冷たさだった。
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