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『日本は八百万、って言われてるくらいだから沢山神様がいるよねぇ。その種類は多岐に渡り、正確に知るのは難しい。小さい社、ってことは多々家くんが見たのは氏神様じゃないかなぁ。氏神様っていうのは、その特定の集落で信仰されている神様のことね。地域限定の神様ってことだよ』
「それも漫画で知ったのか」
僕の言葉にあいりちゃんは答えない。
『でも一番重要なのはさ。日本の神様って、正体がなにかわからないんだよね』
「……どういう意味だよ」
『外国の神様って役割がはっきりしてるんだよね。神様は神様、ほかの何者でもない。だけど日本は違う。日本の神様は悪いもの、恐ろしいものも、神様として祀った。その被害は神様の怒り、少しでも怒りを鎮める為に様々な諸悪の根源を信仰へ昇華していった。天災なり、病気なり、怨霊とか。ね』
あいりのくすくすとした笑い声が響く。無機質な機械から流れる音声が、どこか現実離れしているような気がして僕は不安になった。
『今はもうその脅威も薄れているだろうけどね。人は偉大だもん。天災も予想し、病気も不治の病と言われたものは克服しつつある。怨霊なんて、今は化石もいいとこだよ。笑い話になって終わりだ、大部分のひとにとってはだけど』
「結局あいりちゃんは何が言いたいんだよ」
思わず昔の呼び名になってしまった。あいりを「あいりちゃん」と呼んでいた、随分昔の呼び方に。
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